【マンドリン】脱・初心者に向けたトレモロ練習

【マンドリン】脱・初心者に向けたトレモロ練習

※追記
この記事を読んでいただいた読者樣から、「勉強になった」と嬉しいコメントをいただきました。
ご希望により、本記事にはコメントは載せませんが、お礼の言葉を伝えさせていただきたかったので追記しています。
ありがとうございます!


こんにちは、坂口です。

この記事では、脱・初心者に向けてどういった練習を行えばいいのか、ということについてお話しします。今回は【トレモロ】にフォーカスして
演奏時にトレモロを行う際にどのような点を意識し、それらをどういった形で実際の演奏に反映する
「初心者っぽく聞こえないか」みたいなことを書いていければと思います。

  • トレモロはできるようになったので、次のステップに進みたい
  • 上手な人がトレモロしている際に意識していることを知りたい
  • シンプルにトレモロが上手くなりたい

といった方々の参考になれば幸いです。

あくまでも「自分は上手い!」みたいなことを言いたいのではなく、この記事では
「プロ奏者と一緒に合奏して指摘されたこと」
「上手な人の演奏を聴いて自分なりに気づいたこと」
を共有する、ということを目的としています。

一応コンマスとしていくつか演奏会を経験させていただいており、「脱・初心者」ポジションとしてちょうど良さそうな自分から、色々共有させていただければと思います。

色々ツッコミどころ満載かもしれませんが「まあそういう考え方もあるよね」程度で読んでいただければ幸いです。

ちなみに「トレモロのやり方が知りたい!」「トレモロをできるようになりたい!」といった方には、以下の記事で詳しく説明しているのでぜひ参考にしてください。

それでは説明していきます!

本記事における初心者の定義

そもそも「初心者」というのは人によって定義が異なります。「滑走アルペジオをバチバチにハメ込めるようになってから脱・初心者」みたいなめっちゃ厳しい人もいるかもしれません。

なので本記事以降では技術別に初心者、脱・初心者レベルとはどういったものか、というのを予め決めておこうと思います。(本記事ではそのように定義している、というだけで、別に一般論とかではないですのでご了承ください)

トレモロ:初心者の定義
大体当てはまるな〜と思ったら初心者ないし脱・初心者への道を歩んでいる人だとしましょう。

  • トレモロが最近できるようになった
  • 特に無理なく、トレモロを用いた楽曲演奏ができる

トレモロ:脱・初心者の定義

  • トレモロ回数と音量という概念を知る
  • トレモロと感情的表現の関係性を知る
  • 上記概念をコントロールし、実際の演奏にそれら効果を反映させられる

上記定義は、日本のマンドリン界に存在する「合奏でトレモロできなきゃ話にならないよね!」みたいな風潮を反映させています。なので厳しめです(この風潮、嫌ですね)

では早速説明していきます〜

トレモロ回数と音量のコントロール

「トレモロができる」という状態から「トレモロを使える」という状態に持っていくのが理想ですよね。
本記事では、演奏時にトレモロ奏法を効果的に用いるためのポイントである

  • トレモロ回数のコントロール
  • トレモロ音量のコントロール

について詳しく言及します。

トレモロを行う際に、上記の二つの観点を意識しながら演奏することが、脱・初心者レベルにおいては非常に重要だと思っています。
なので、「上記ポイントとは何を意味しているのか?」「なぜそれらを意識する必要があるのか?」「どういった形で演奏に反映すればいいのか?」ということを詳しく説明していきます。

トレモロ回数とは?

トレモロ奏法における「回数」という概念をご存知でしょうか。「回数」とは何かを説明すると

ある音符やフレーズに対して、何回ピッキングをしてトレモロ奏法を行うか

ということです。例えば以下の楽譜をトレモロしながら演奏してみてください。

この場合、適当にトレモロして演奏するのも全然OKですが、「回数」という概念を持ち込んでトレモロしてみると色々な違いがあることがわかると思います。

試しに

8分音符1つあたり、ピッキングを4回

にしてトレモロしてみましょう。
次に3回に減らしてみたり、逆に5回・6回…と増やしてみたりといった感じで、トレモロの回数を変化させて演奏してみましょう。1拍毎に回数を変化させてみるのもいいかもしれないです。

トレモロの回数(ピッキングの回数)を変化させると、同じフレーズでも弾きやすかったり弾きにくかったりすることが分かると思います。同時に、そのフレーズがどういう印象を与えるのか、という点も変化することが実感できるはずです。

実際に弾いてみるとこんな感じです。

トレモロ回数を固定した演奏
トレモロ回数を変化させた演奏

トレモロの回数を変化させた演奏は、一緒に住んでいるおばあちゃんが掃除機をかける中で録音したので、掃除機の音が入っています。すみません。

上手いか下手かはさておき、印象が全然違うことが分かると思います。
トレモロの回数を固定した前者の演奏は、なんだか平坦な印象を受けるのではないでしょうか。
一方で、トレモロの回数を変化させた後者の演奏は、フレーズの動きを感じやすい演奏だと思います。

上記のように、何気なく行っているトレモロに対して「ピッキングの回数」で厳密に区分する、ということがトレモロ上達(というよりマンドリン上達)のキーになってきます。

(余談ですが、トレモロ回数じゃなくて厳密に言えば「トレモロ時のピッキング回数じゃないか?」とか思ったりもしますが、面倒なのでこの記事ではトレモロ回数としておきます。上記の概念は「回転数」みたいに言われたりもしますね。「トレモロするときに手首回すのか?」と思いますが、まあ言わんとすることはなんとなく分かるので、そういう言い方もすることがあるんだな、とご理解いただければと思います)

音量について

音楽では、音量(ダイナミクス)のコントロールが非常に重要だ、ということは何となくみなさん知っているかと思います。ライブとかの盛り上がる場面で急に音が小さくなったら、なんか変ですよね。テンション上がるのと同時に音量も上がったら、更に気分が高揚します。
楽器を演奏する側になると、なおさら上記のようなことは意識しないといけないですよね。
感覚的に音楽において音量のコントロールが重要であることはお分かりになるかと思います。

音量という観点から考えると、マンドリン演奏において課題になるのが「トレモロ時の音量」です。
先ほどの回数の話とも関連しますが、結局のところ「トレモロとは何か?」というと「連続して行うピッキング動作」になるので

トレモロ時の音量コントロール=連続して行うピッキングにおける、動作1回毎の音量コントロール

ということになります。より具体的にイメージすると、

・トレモロ時の1回毎のピッキングの音量がまばらである
・トレモロとして聴いた際に、急に音量が大きくなったり小さくなったりと、音量が不揃いで聞き心地が悪くなってしまう

ということですね。

実際に演奏してみると、このような感じになります。

トレモロ音量がまばらな演奏
トレモロ音量をコントロールした演奏

どうでしょうか。前者のまばらな方を聞くと、拍節感やどういったフレーズを弾いているのか、などがあまり伝わりにくいような印象を受けるのではないでしょうか。
後者の音量をコントロールした演奏は、どういう拍・フレーズなのかが聞いただけで分かると思います。

ピッキングを連続して行い、あたかも一つのフレーズであるかのように演奏するトレモロですが、トレモロの音量をコントロールしないと「なんか音量がガタガタしててよくわからんな」みたいに聴き手に解釈される可能性があります。

上手な人のトレモロを聞くと、ピッキングの連続動作(つまりはトレモロ)毎に、適切に音量をコントロールしているので「自然に」聞こえるわけですね。

なぜ回数・音量を意識するべきなのか?

雑にまとめると、トレモロの回数と音量に気を付けると

「マンドリンが弾きやすくなるし、なんかいい感じに弾いてるように聴こえる」

ので、意識した方がいいです。

より詳しく説明すると、トレモロの回数と音量をコントロールする理由としては

  • 楽器の演奏動作における課題を克服しやすくなる
  • 演奏時の音楽的表現を行いやすくなる

というメリットがあるから、というように説明できます。

楽器の演奏動作(メカニック)における課題として一例を挙げると、【トレモロ中の移弦】が代表的かな、と思います。(トレモロ中に弾く弦を変えるやつです。むずいですよね)
【トレモロ中の移弦】を行いやすくするためには、移弦時にアウトサイドピッキングになるようにすることが必要ですが、移弦前に行うトレモロの回数を操作して「移弦をダウンピッキング or アップピッキングのどちらで行うか」といったことを予め決めておくことで、楽に演奏できます。
上記のように、回数・音量コントロールによって、メカニックにおける課題を解決できる、という感じですね。

アウトサイドピッキングって何?という方は以下の記事をご覧ください。
移弦のセクションで、アウトサイド・インサイドピッキングという概念について触れています。結構大事なので、ご存じでない方は読んでみると参考になるかもしれないです

また、同じフレーズを演奏するとしても「トレモロの回数や音量をコントロールすることで聴き手に与える印象を変化させられる」という、音楽的表現を行いやすくするメリットもあります。こちらは後ほど詳しく説明します。

脱・初心者のための実践練習

トレモロ回数のコントロール練習

練習に関しては、以下の楽譜を参考にしてみてください。

こちらの楽譜を使用してもいいですし、適当にメトロノームに合わせて回数をコントロールする練習を行ってもOKです。

トレモロ回数でよくあるミス

◆トレモロ回数を詰め過ぎてしまう

他人の演奏を聴いていたり、自分自身の演奏経験を通じて思うことですが

人前で弾くときに緊張しすぎて、めちゃくちゃ高速でトレモロしているケース

があります。無意識でトレモロの回数を詰め過ぎてしまう、という形ですね。

意図的に回数を早くしているのではなくて「なんとしてでもトレモロを続けなければ…!」みたいな形で焦って爆速トレモロをしている場合、必要以上の右手の緊張によって疲れるだけでなく、連鎖的にいろんな演奏動作に支障が出てしまいガタガタの演奏になってしまう、といったエラーパターンがよくあるかな〜と思います。

ピッキングの連続動作において、トレモロに聴こえるピッキング回数の「下限」がどれくらいなのか、というのは聴いている側の感覚に委ねられる部分は大きいとは思いますが、個人的には「かなりゆったりめの回数」でもトレモロに聴こえると思っています。

なので、基本的なベースとなるトレモロの回数・ピッキング回数の下限はかなり広めにとっても問題ない気がします。(個人的には♩=140前後で16分のピッキングくらいがトレモロに聴こえる下限なんじゃないかな〜と思います)

特に人前で演奏を披露する際、初心者の方は「トレモロしなきゃ!」みたいな形で焦ってしまいがちですので、トレモロの回数を詰め過ぎて疲れないように気をつけましょう。

トレモロを常に同じ回数で行うケース

別にミスではないのですが、トレモロの回数を全く考慮せずにずっと同じペースでトレモロをしている場合、聴き手としては「なんか平坦な演奏だな」と思われる可能性があります。

棒読みな演奏、といいますか、面白みにかけた演奏になってしまいがちなので、トレモロの回数を変化させながら演奏できるようになると、初心者っぽく聴こえない気がします。

「じゃあどうやってトレモロの回数を選択したらいいのか?」という疑問については、後ほど「トレモロ回数・音量の変化と感情」というところで詳しく説明します。
(トレモロ回数・音量の違いによって、奏者が表現したいことと聴き手に与える感情的印象をコントロールできる、ということを説明します。)

余談
トレモロにおけるピッキングの連続動作においては、それが「トレモロらしく聴こえる要因」は回数ではなく「音量のバランス」が大きく関連しているのではないか?と思います。
トレモロ動作を行う際、連続して行うピッキングの音量バランスが「一連のフレーズとして辻褄が合っている」場合、トレモロっぽく聴こえるんじゃないか、ということです。いくら回数が詰まっていても、各ピッキングの音量バランスが乱れてしまって、一連のフレーズとしての音量がところどころ大きかったり小さかったり、みたいになるとトレモロらしく聴こえなくなる気がしているので、ぜひ参考にしてみてください。

トレモロ音量のコントロール練習

以下の楽譜を参考に練習を行ってみてください。

解放弦(ないし適当な単音)でトレモロをして、音量を滑らかに変化させる練習を行ってみましょう。
音量が急に大きくなったり、まばらに変化しないように意識しながら、単音のトレモロで音量コントロールの方法を体に覚え込ませます。

音量コントロールの感覚が理解できれば、実際のフレーズをトレモロで演奏し、音量コントロールを意識しながら練習してみましょう。

トレモロ音量でよくあるミス

トレモロ開始時だけ音量が大きくなり、トレモロ中に音量を修正するケース

こちらも同様に、他人・自分の演奏を聴いていて思うことです。

トレモロ開始時のピッキング複数回のみ音量が大きく、その後減衰して音量が元に戻る(トレモロ中に音量を修正する)

といったようなケースが多いな〜と思います。

これ自体は別に悪いことではないのですが、問題なのは

トレモロ中に音程を変える際、毎回上記のように演奏する

といったケースがよくある、という点ですね。

音程が変わるたびにガクッと音量が大きくなり、すぐに小さくなって望んだ音量に修正する、みたいな演奏だと、やはり一連のフレーズとしてトレモロを行うことを考えると不自然だと思います。
(歌う際に、音程が変わるたびにめちゃくちゃ声がデカくなる、みたいな感じです。毎回それだと聴いている側も結構しんどいですよね)

そういった意味でも、上記のようなトレモロの音量コントロールの方法を習得し、「一連のフレーズ」としてトレモロを行うことを想定しながら音量を変化させられると強いと思います。

トレモロを常に同じ音量で行うケース

回数同様に、音量に関しても、常に同じ音量で変化なくトレモロを行ってしまうと「平坦な演奏だな〜」という印象を与えてしまいがちです。

例えば楽譜に f(フォルテ)と指示があったとして「常にフォルテで演奏しなければ!」みたいに考えてしまいがちですよね。個人的には、トレモロに限らず演奏時の音量指示については

楽譜にフォルテと書かれている:常にフォルテで演奏する

ということではなく

楽譜にフォルテと書かれている:フォルテを基準とした上で、フレーズ中の音量コントロールを常に行って演奏する

というように解釈するといいんじゃないか、と思っています。

単に楽譜に書かれている音量記号でトレモロし続けるのではなく、その音量を基準としてトレモロを行い、音量コントロールを絶えず行って演奏する、ということです。

上記を意識することで、音量面から考えた時に平坦な演奏に聴こえにくくなると思うので、ぜひ参考にしてみてください。

トレモロ回数・音量の選択

このセクションでは「具体的にトレモロの回数・音量をどう選択するべきなのか?」ということに関して

  • トレモロと感情を関連づけた回数・音量選択方法
  • アンサンブル・合奏時に気を付けること

をベースにご説明します。

トレモロと音楽的表現

前述した説明では、トレモロの回数・音量をコントロールする方が
なんかいい感じに弾いてるように聴こえる
ということをお伝えしました。

要するに、トレモロの回数・音量をコントロールした方が、トレモロ奏法を用いた演奏を行う際、より「音楽的表現」を意識した演奏が可能になる、ということです。

「音楽的表現」について詳しく言及すると、例えば
「上昇音型だと気分が高揚する印象が含まれるので、若干のクレッシェンドがかかる」
「重音・和音の音程や度数に従って、柔らかい音色で演奏する、もしくは緊迫した響きを作る」
といったように、理論に基づいた表現方法によって演奏内容が決められる場合があります。
一方で「何かこの場面は盛り上がった方が良さそうだから、クレッシェンドする」といった感覚由来の表現方法の決定もあるかと思います。

しかし、初心者の段階で初めから、前者のように理論ベースで「こういうケースはこういう表現を選択する」みたいなことを考えながら演奏するのはなかなか難しいですよね。
自分は理論とかはダメなので、よく分かりません。後者のように勘・フィーリングの感覚ベースで表現を決めることが多いです。

なので、以降では感覚由来の表現方法に焦点を当て、
「奏者・聴者の感情とトレモロ回数・音量の関係性」
を可視化し、脱・初心者に向けて、それらに基づいてトレモロ回数・音量を選択する、というのはどうですか?という話をします。

奏者・聴者の感情とトレモロ回数・音量の関係性

だいぶ攻めた内容になるかと思いますが、本記事ではトレモロ回数・音量については

  • トレモロの回数の多少:聴衆への感情的印象の伝達度をコントロールすることができる
  • トレモロの音量の大小:表現する感情の起伏の激しさをコントロールすることができる

といったように理解することを提案します。詳しくは以下の図の通りです。

上記の図では、トレモロの回数の多少、また音量の大小の2次元で分類しています。

といった感じですかね。より詳しく説明すると

トレモロの回数が多い:印象伝達の積極性が高い

トレモロをして表現したい内容や伝えたい感情的印象について、聴衆により積極的に伝達する場合は、トレモロの回数を詰めることが多い気がします。奏者側から働きかけて、ある特定の感情を印象付けたい場合に効果的だと思います。

トレモロの回数が少ない:印象伝達の積極性が低い

回数が少ないトレモロでは、聞いている側に感情的な強い印象付けを行わず、あえて自由に解釈してもらうようなケースに使われると思います。積極的に印象を押し付けるのではなく、弛緩性を保ちながら聞いている人に「察してもらう」という側面が強いのではないでしょうか。

トレモロの音量が大きい:感情の起伏が激しい

演奏する曲の性質にもよりますが、音量が大きいトレモロでは比較的「インパクトの大きい感情」を表現することが多いです。楽曲中で一番盛り上がるような場面で表現される「喜び」や、激しく燃えるような「怒り」「絶望」といった、ある意味ショッキングな感情が表現されやすいと思います。

トレモロの音量が小さい:感情の起伏が穏やか

前者とは対照的に、小さな音量で行うトレモロでは「安心感」といった穏やかな感情から、「諦め」「切なさ」といった繊細な感情を印象付けることができると思います。心の内に秘めるような、内在的な感情を表現する際に適切だと思います。

トレモロの回数・音量の変化が、どのような基準で決定されているかについては、上記のようなイメージを持つとわかりやすいではないかと思います。

具体的な感情とトレモロ回数・音量

前述した基準に基づいてトレモロを区分し、それぞれ具体的にどのような感情的印象に相当するのか、ということを説明すると、以下のように表現されるかな〜と思います。

各象限におけるトレモロが、奏者・聴衆が感じる感情とどのように対応しているかを可視化しました。
(あくまでも個人的にこう感じることが多い、というだけで、人それぞれ若干の感覚の違いはあると思います。)

第1象限:回数が多く、音量も大きいトレモロ

個人的には、情熱的なセクションであったり、大きな喜びや深い悲しみなど、曲が与える(また弾いていて感じる)感情的変化のインパクトが大きい場面で回数が多く、音量も大きいトレモロをすることが多いです。
このようなトレモロがどういった印象を与えるか、というのは曲によると思いますが、誰が聞いても「絶対今の場面は喜びに満ち溢れてるよね!」「この曲で一番盛り上がる部分だな」
みたいな、奏者・聴衆が同一の感情を共有することが明らかな場面では、効果的だと思います。

第2象限:回数が少なく、音量が大きいトレモロ

端的に言うと「雄大さ」「広がり」を表現したいときに使うトレモロだと思います。
盛り上がるんだけど、切羽詰まっている感じにはしたくない時に効果的だと思います。
あとは、言語化するのが難しいのですが、例えば悲壮感を感じる曲を演奏するときに
「奏者が感じる深い悲しみを、聴衆へ共有しようとする段階」
みたいな場面でも使う気がします。
奏者が持つ主観的な起伏の大きい感情を、聴衆が客観的に観察しているようなシチュエーションで使うのがしっくりくるかな、と思います。

第3象限:回数が少なく、音量も小さいトレモロ

「これから何か始まりそうだぞ」「何かが終わりそうだぞ」みたいな場面で使われることが多いと思います。言葉にすると、楽曲中にて落ち着いた印象を与えたい時だったり、「もうこの場面は終わります」みたいな時に、回数が少なく、音量も小さいトレモロをするといいかもしれないです。
他には「何か思ってるんだけど言葉にはしない」みたいな感情的側面を表現できるかもしれないですね。「今弾いてるこの音で終始します。察してね」みたいな状況でも使います。

第4象限:回数が多く、音量は小さいトレモロ

楽曲の持つ印象として、繊細な喜び・悲しみ神秘性を表現したい時には、回数が多く、音量は小さいトレモロをすることが多いです。前述したような回数・音量と感情表現の関係性に基づくと、起伏の小さな感情を聴衆に伝える、という意味では上記のようなトレモロが効果的だと思います。
加えて、これから大きな感情変化が期待されるような場面でも使われると思います。
恋愛ものの楽曲で「振られそうになっているタイミング」みたいな感じですかね。「振られるかもしれない、いや、ワンチャン振られないかもしれない」みたいな期待や葛藤を表現する際などは、上記のトレモロがしっくりきます。

トレモロの回数・音量と感情的な側面の関係性はなんとなく掴めましたか?
あくまでもここに書いてあるのは個人的なイメージなので、人それぞれ差異はあると思いますが、概ねこんな感じで理解しておいてトレモロの回数・音量を設定するのもアリかと思います。

自分の場合、上記のように完全に区分してトレモロを行っているのではなく、その都度、タイミングで感じ取ったり表現したい内容に合わせてグラデーション的に回数・音量を変化させています。

「何いってんの?」という話を永遠と続けてしまいましたが、ここでは「奏者・聴者の感情とトレモロ回数・音量の関係性」に基づいてトレモロ回数・音量を選択する、という一つの提案をさせていただきました。(共感してくれる人がいたら嬉しいです…)

表現方法としてトレモロの回数・音量を選択する必要性は理解してもらえたかな、と思います。
では、これらをアンサンブルや合奏で考慮する際にはどうしたらいいのでしょうか?
最後に、上記ポイントについて言及したいと思います。

アンサンブルや合奏でのトレモロ回数・音量の選択

アンサンブルや合奏でトレモロの回数・音量を決めるのは非常に重要です。
特にトレモロの回数に関しては、プロ奏者の合奏指導を受けたことのある方や、ハイレベルな団体で演奏経験のある方は間違いなく指摘されたことがあると思います。
久保田孝先生によるクボタメソッドでは、厳格にトレモロ回数をコントロールしますし、久保田先生作曲の楽譜中にもトレモロ回数の指示が記載されています。(たまに割り切れない1.5回分のピッキング、みたいなのもあった気がします)

では「なぜアンサンブルや合奏で、トレモロの回数・音量を決めるのか?」ということを説明すると、だいたい理由としては以下の二つが挙げられると思います。

  • 音楽的表現を統一するため
  • 弾きやすくなるから

それぞれ解説します。

音楽的表現を統一するため

一つ目の理由に関しては、前述したようなトレモロが持つ音楽的表現として与える印象を統一するためです。Aさんは爆速でトレモロしているけど、Bさんはめちゃくちゃゆっくりトレモロしている、みたいな状況だと、統一感がないですよね。(奏者全体として、トレモロの粒立ちがランダムになることでより滑らかに聴こえる、ということもありそうですが…)

表現方法としてトレモロの回数・音量をある程度決めておいた方が、統一感が出る、ということです。

弾きやすくなるから

アンサンブルや合奏では、どちらかというとこちらの「演奏時の都合」として、トレモロの回数・音量をコントロールすることで特定のフレーズを弾きやすくする、という理由でそれらが決定されることが多い気がします。

楽曲のテンポが速いのか遅いのか、またフレーズの持つリズムや必要になる移弦といった演奏動作など、演奏に必要な各要素を全て考慮して「最も演奏しやすいトレモロ」を行うために回数・音量をコントロールするイメージですね。

具体的な「こういうケースはこの回数とこの音量でトレモロする!」といった対応表的なものはない(現実的に作れなそう)ので、完全に個人の経験とある程度のセオリーに則って決められることが多いと思います。なので、脱・初心者を目指す方々は、「なんか弾きづらいな〜」と思った時に、上手な奏者に「このフレーズのトレモロの回数とか音量のイメージってどれくらいでやってますか?」みたいに聞いてみるといいかもしれないです。それでノウハウを蓄積していきましょう。

まとめ

めちゃくちゃ長い記事になってしまいましたが、この記事では、脱・初心者を目指す方々に向けて、特にトレモロに焦点を当てた上で

トレモロ:脱・初心者の定義

  • トレモロ回数と音量という概念を知る
  • トレモロと感情的表現の関係性を知る
  • 上記概念をコントロールし、実際の演奏にそれら効果を反映させられる

ということを前提に、上記の内容をマスターするための練習方法や、背景にある理屈をご説明しました。書いたことを全て意識する必要なく、できることからチャレンジすれば「初心者っぽく聞こえないトレモロ」ができるようになっていくと思います。

正直、特に後半の内容としては、誰かに習ったとかではなくて「自分はこう思う」というだけなので、参考程度にしてみてください。

ここまで読んでいただいた皆様、ありがとうございました。
次の記事もお楽しみに。(頑張って書きます)

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管理人・ライター

坂口

2000年、北海道生まれ。

北海道大学入学後、北海道大学チルコロ・マンドリニスティコ「アウロラ」に入部したことをきっかけに、マンドリン、クラシック音楽を本格的に始めました。マンドリン、クラシックギターを吉住和倫に師事。

アウロラの第98代コンサートマスターとして、またマンドリンアンサンブル・リデアなどで活動後、現在は札幌市内のマンドリンオーケストラであるフィラルモニカ・マンドリーニ・アルバ・サッポロにて演奏しています。

マンドリンやギターのメディア運営を通じて、音楽の面白さを伝えていきます。

ライター

小森

2000年、静岡生まれ。

16歳でクラシックギターを始め、北海道大学入学後、北海道大学チルコロ・マンドリニスティコ「アウロラ」に入部。アウロラ98代ギタートップ。
クラシックギターを深澤太一氏、吉住和倫氏に師事。これまでに大萩康司氏、菅沼聖隆氏、小暮浩史氏のマスタークラスを受講。2020年北海道アマチュアギターコンペティション6位、2021年同大会5位。

マンドリンアンサンブル・リデアで活動後、フィラルモニカ・マンドリーニ・アルバ・サッポロにて演奏しています。