こんにちは。坂口です。
弦楽器の演奏者にとっては共通の悩みだと思いますが、
なぜ大事な本番中に限ってチューニングがずれるのでしょうか?
特にマンドリンは主弦と副弦があるので、片方がずれるとそりゃあもう悲惨ですよね。
僕も人前でソロや二重奏を演奏している際にチューニングがよくずれてしまいます。
演奏中に調弦しようとして余計にずれて失敗する、というやらかしもありましたね~
今回の記事では、僕がチューニングに対して考えていることや経験したことをもとに
本番中にチューニングがずれる原因と対処法
について書いていきます。
- 本番中にチューニングがずれやすくて困っている
- チューニングがずれないようにする対策を知りたい
- 演奏中に調弦して雰囲気を出したい
という方の参考になれば幸いです。
それではいきましょう~
チューニングずれの結論
大まかに結論だけまとめると、以下の通りとなります。
◆本番中のチューニングずれを防ぐための対策
- 本番前に楽器をしっかり温めておくこと
- 弦を変えた際に、弦を伸ばしてストレッチさせること
◆本番中にチューニングがずれた時の対処法
- 調性に注意しながらこっそりチューニングする
- 素直に諦める
これらに関して、詳しい説明を含めながら解説していきますね。
なぜチューニングがずれるのか?
そもそも、なぜチューニングがずれる、ということが起こるのでしょうか?
チューニングずれの原因がわかれば対処法をいろいろ考えられるので、ここではチューニングがずれる原因を挙げてみます。
楽器の温度変化
実は楽器本体の温度が変わると調弦がずれることが多いです。
マンドリン属の楽器は木材でできていますよね。
その木材なんですが、めちゃくちゃ簡単に言うと温度が上がったり下がったりするのと同時に大気中の水分を吸ったり吐いたりしてるんですよ。つまり木材が呼吸してるんですよね。
「木は呼吸している」みたいな話を木工職人さんが言ってるのを聞いたことないですかね?
あれは誇張して言っているんじゃなくてガチで吸ったり吐いたりしてるんですよ。
では、木材が呼吸をする、つまり水分を吸ったり吐いたりするとどうなるか分かりますか?
正解は、木材が膨張したり収縮したりするんですよね。
楽器のチューニングのずれはこれが原因で発生します。
木材の大きさが膨張したり収縮したりすることで、弦が通常よりちょっとだけ引っ張られたり逆にゆるくなったりして調弦がずれる、ということです。
まとめると
- 楽器の温度が変化することで、楽器本体(木材)の含水率が変化する
- 含水率が変化することで、楽器本体(木材)が膨張・収縮する
- 膨張・収縮によって弦の張力が変化して調弦がずれる
ということですね。
弦が伸びきっていない
特に演奏会前って新しい弦に変える人が多いですよね。
この際に、弦がしっかり伸びきっていないと調弦がずれてしまいます。
マンドリンの弦は金属でめちゃくちゃ硬そうですが、引っ張れば若干は伸びるんですよね。
特に死んだ弦などは最大限に引き伸ばされてダルンダルンなので、一度調弦すると安定しやすいですが、新弦だとまだ引き伸ばされる余地があるんですよね。
なのでしっかりと伸ばしてあげないと本番中に弦が伸びてしまい、結果的に弦の張力が緩んでチューニングがずれる、ということが起こり得ます。
クラシックギターを演奏したことがある方なら、弦の伸びによる調弦ずれはより実感しやすいと思います。
クラシックギターの弦交換だと、6弦から1弦まで調弦し終わったら6弦が全音近く下がってるみたいなのはよくあるんですが、マンドリンも実は起こるんですよね~
ピッキングの影響
結論から言うと、多くの場合で本番中は副弦(2本セットの下の弦)が音低が下がりやすくなります。
理由としては、マンドリンという楽器の奏法上、副弦の方が主弦に比べて弾かれる回数が多いからですね。
先ほども言ったように、
・本番前は新弦に変える人が多い
→弦がしっかり伸びきっていない、まだ伸びる余地がある場合が多い
・弦が伸びると調弦が下がる
→弦の張力が緩むため
ことを前提にして考えてみましょう。
マンドリンのピッキングでは基本的に〈強拍ではダウン、弱拍ではアップ〉を用いることになっていますよね。
強拍(重い拍)では、主弦+副弦を同時に弾いて重厚感のあるピッキングを、
反対に弱拍(軽い拍)では、副弦のみ弾いて軽快なピッキングをすることが基本になっていると思います。(斜行奏法とか言われてた気がします。)
するとどうでしょう。単純に考えると副弦の方が弾かれる回数が多いんですよね。
そうなってくると、頻繁に弾かれる弦の方が伸びやすいため結果的に主弦より先に副弦だけが緩んでしまって音程が下がる(調弦がずれる)ことになります。
またほとんどの奏者は楽器の表面板を若干上に向けた状態で構えていますよね。
この場合、ピッキングが地面に対して平行に構えて演奏されることが多いので、トレモロでも比較的主弦が当たりにくくなる傾向があります。
そうすると、ピッキング同様にトレモロも副弦の方が弾かれる回数が多くなる(なりやすい)ので副弦が緩んで音程が下がりやすくなります。
チューニングがずれるときの対処法
原因が分かったところで対処法を説明していきますね。
楽器を温めておく
先ほど伝えたように、楽器の温度が変化することで調弦がずれてしまいます。
それを避けるために、本番前に楽器を温めておきましょう。
多くの場合、本番中のステージ上では
・照明が多く、ステージ上の気温が上がりやすい
・人数が多い(奏者、観客)ことでホール自体の気温が上がりやすい
・演奏動作によって奏者の体温が上がりやすい
ことが原因で、舞台裏に比べて楽器の温度が高くなりがちです。
なので、舞台裏で楽器を抱えて体温で温めてあげましょう。
(僕は楽器を抱きしめながら本番に臨みます。)
楽器を抱きしめて温めるのは半分ネタ(半分本気)なんですが、
要するに、楽器の温度をステージ上の気温・奏者の体温と同じくらいにしてあげればいいので、本番前はステージ上に近い温度で楽器を保管して、楽器の温度変化が起こりにくい状態にしてあげるといいです。
特に冬場は「楽器ケースにカイロ入れればいいんじゃね?」と思ったこともありますが、急激な温度変化は楽器に良くないはずなのでやってないです。あとは暖房の目の前に楽器を置く、といったことも絶対やめましょう。乾燥します。
弦をストレッチさせる
多分既に行っている人もいるかと思いますが、新弦に変えた後にはしっかり弦をストレッチさせましょう。
具体的には、交換した弦にピックで押し当てて引っ張ったりするだけでいいです。
何回か繰り返してからチューニングしなおすと音程が下がっているはずです。
このように弦が伸びて音程が下がる、ということを本番中に避けるために、あらかじめ伸ばしておくといいですよ~
演奏中にチューニングするテクニック
・開放弦のトレモロ中に調弦
楽曲中に開放弦で全音符とか伸ばしてるところがありますよね。
そういうセクションで開放弦を弾きながらチューニングするのは結構オススメです。
演奏中だと
〈小さい音で調弦せざるを得ない〉〈周りが演奏しているので音が聞こえない〉
といったことから、普段通り調弦しづらくなってしまいます。
ですが、開放弦でトレモロしている際に調弦すると
〈音量は普通に出せる〉〈ほとんどの場合、同じパートの人も同じ音を弾いてるので調弦を合わせやすい〉〈演奏から離脱しなくてすむ〉
といったメリットがあります。
是非やってみてください~
・スケール内の音で調弦する
開放弦で伸ばすところがほとんどない曲も当然あるわけです。
そうなってくると演奏中に調弦するしかないので、こういう場合はスケール内にある音を弾いて調弦しましょう。
例えば#が3つのA Major / F# minor (イ長調 / 嬰ハ短調)がキーである曲を演奏しているとします。
この場合に開放弦G線の調弦がずれてしまったとしましょう。
この際、シャープが付いているのは F#, C#, G# の3音ですが、普通にG線を開放弦で弾くとスケール内のG#と開放弦のG#がクラッシュしてめちゃくちゃ目立ちます。
じゃあどうするのかというと、普通にG#(G線1フレット)を押さえて音を出し、それ聞きながら調弦すればいいわけです。
こうすることで演奏中に音を出してもそこまで極端に目立つわけではないので、普通に調弦できます。
要するに調合に従って調弦しろってことです。#3つだとG#、#4つだとD#あたりを押さえてG線、D線を調弦すればいいし、A線の場合は♭が付く楽曲ではB♭を押さえて調弦したらいいと思います。
開放弦E線についてはFを押さえて調弦するのが一番いいんじゃないでしょうか。(調合の順番的にF♭が最後に来るので)
みたいな感じでスケール内の音を使って調弦すると目立たなくていいのでオススメですよ。
・諦める
最後の手段は「諦める」です。
ソロの場合は諦めることは難しいですが、合奏曲などでは諦めた方がいいパターンもあります。(華燭の祭典の1楽章で思いっきり弾いた結果ズレて、2楽章の最初で邪魔しそうになるとか…僕が本番で実際にあったケースです)
そういう場合は素直に諦めるか、音色に注意しながら他の弦で代替して演奏するしかないと思います。
まとめ
こんな感じで調弦がずれる原因と対処法を書いてみました。
これ以外にも調弦がずれる原因はありますが、考えられるのは楽器そのものの調子が悪かったり弦がハズレだったりするくらいですかね。
あとは弦の巻き方とかも関係ありますね。
正しい弦の巻き方はイケガクさんがYouTubeに出していたので参考にしてみるといいと思います。
以上になります。読んでくれてありがとうございました~