【マンドリンの音 第1回】そもそも楽器を鳴らすとは?鳴りとは何なのか?

【マンドリンの音 第1回】そもそも楽器を鳴らすとは?鳴りとは何なのか?

こんにちは、坂口です。

大学院や演奏会など諸々忙しすぎて全く記事を書いていませんでした。

特に就活がきついです。このサイトが収益源になってくれればいいんですけどね。
そんな上手いこといかないので頑張ります。

さて、最近サークルOBとして出演した演奏会を経て、新しく入部してくれた新入生が頑張っているのを見たので
少しでも現役の活動に貢献できればいいなということで、久しぶりに投稿します。

今回は【マンドリンの音】シリーズということにして、その記念すべき第1回は

楽器を鳴らす

ということについて書いていきます。

マンドリンに限らず、楽器を始めた人は
「いや~、よく楽器が鳴ってますねぇ!」
「もうちょっと鳴りがほしいかな!」
みたいな、特に初心者にとっては「はぁ?」となるような意味不明な会話、よく聞くのではと思います。

これは一部「分かってますよ」感を出したい人が格好つけて言ってるだけのパターンもありますが、
「楽器の鳴り」はある程度楽器を弾くと、しっかり認知できるものです。

また、楽器の鳴りに対して「音量が大きいと良く鳴っている」と解釈する方もいますが
個人的にはそうではないと思っていて、「楽器が良く鳴っている結果として、音量が大きくなっている」ということだと思っています。

今回の記事では、曖昧な解釈をされがちな「音量・楽器の鳴り」に対して、

・そもそも楽器の鳴りとはなんなのか
・楽器が鳴るメカニズムとは
・どうすれば楽器を鳴らせるのか

といったことについて、解説していこうかなと思います。

実は楽器の鳴らし方については、僕がサークル運営代の時に部員向けに書いたnoteがあるので、今回はその記事の内容をほぼ丸ごと移植しようと思います。(書き直すのが面倒くさいので)

この記事に書いてあることを理解すれば
・「鳴り」について理解できる
・音量がよく出るようになる
・音色がよくなる

ので、興味のある方は最後まで読んでいただけると幸いです。

では、説明していきます。

はじめに

僕は基本的にマンドリン(ギターはほんのちょっと)しか弾けないですが、弦を弾いて楽器を鳴らす撥弦楽器に関して、楽器を鳴らすというメカニズムは、マンドリン、ギターのどの楽器でも同じだと思っているので共有しておきます。

ただしここに書いてあることは、僕が習っている先生が言ってたとか他のプロがそういう話をしていた、ということではなく、完全に僕の主観、経験によるものです。
正しいかどうかはぶっちゃけ分からないので(特に発音原理等の物理関連とかは全く勉強していないので、説明は適当です)参考程度にしてください。
「自分はこう思って楽器を弾いてるんだよね」って話なので
「この点は明らかに誤っている!」「不確かな情報を広めるな!」
みたいな野暮な意見はちょっとダルいのでやめてください。

この記事では、ベースとして

  • 音量が小さいのは「楽器を鳴らす」ことをしていないのが原因
  • 「楽器を鳴らす」とは「楽器を振動させる」ということ
  • 「楽器を鳴らす(振動させる)」には、ブリッジを経由して弦の振動をボディに伝える必要がある

ということについて説明しています。

特に3つ目に関しては複雑なので最初に書いておきますが

ブリッジに対して垂直方向の弦の振動を与える

ブリッジが振動するため、ブリッジにくっついている表面板も振動する

表面板が振動するため、表面板とくっついているボディ(横板、裏板)も振動する

楽器全体が振動するため、楽器の振動による音が発生する

弦だけの音ではなく、所謂「楽器の鳴り」が音量にプラスされる

音量が出るようになる

ということを詳しく説明しています。

マンドリンの音量について

一般的な「音量」を構成する要素は少なくとも二種類あると思っています。説明していきます。

①弦が振動して発生する音

例えば、輪ゴムをピンと張ったら音が鳴りますよね。
この場合、単純に輪ゴム自体が振動することで音が鳴るということです。言い換えると
輪ゴムという物質自体が振動することで音が鳴る
ということです。

楽器に置き換えると、ピックや爪で弦を弾くことで、
弦という物質自体が振動することで音が鳴る
ということになりますね。これが弦が振動して発生する音です。

特に音量という観点から考えると、弦に対してピックや爪で強く圧力をかける(思いっきりガシガシ弾く)場合、弦自体の振動量が増えるので音量も増していくということになります。

僕が思うに、ほとんどの人は
「今よりももっと音量を出すぞ!」
としようとした際に、上記のように思いっきりガシガシ弾くことで
弦が振動して発生する音を増やそうとしている
と思います。

でも、プロ奏者や、めちゃくちゃ上手い人と比較すると
根本的に音量、音質に差があるような気がすると感じている人も多いんじゃないでしょうか。
そもそもの音量が一段階上にある、というか
音自体が違うように聞こえる、みたいな感じで良く分からない、と思ってる人もいると思います。

ですが、以下に説明する
もう1つの音量の要素
を知れば、多分プロ奏者やめちゃくちゃ上手い人みたいな感じに音を出せるようになると思います。説明していきます。

②楽器が振動して発生する音

①では弦が振動して発生する音について説明しましたが、音量を構成する要素として最も重要なのは、実はこっちの楽器が振動して発生する音です。
端的に言うと、「楽器の鳴り」ですね。

結論から言うと、上手い人と比べて根本的に音量が小さい、どれだけ頑張って弾いても音量が全然出ない原因は、先ほども伝えたように
音量を出そうとする際、①の弦が振動して発生する音だけで対処しようとするため
です。
②の楽器が振動して発生する音、つまり「楽器の鳴り」を全く考えていないのが理由です。

また音量とは話が変わりますが、ショボい音色しか出ないとかいう場合も、ほとんどが「楽器の鳴り」を全く考えてないからです。

以上のように、①、②を考慮して音量についてイメージするとこんな感じですね。

音量が小さいのはこういうことが理由です。
原因が分かれば対処していけばいいだけなので、次は「楽器を鳴らす」ことについて説明します。

楽器を鳴らすことについて

よくある勘違い

大抵の人は「楽器を鳴らす」ということについて、
楽器が鳴る=音量が大きい
みたいな感じで考えてると思うんですけど、全然違います。

鳴っている状態であれば音量は大きくなるが、音量が大きいからといって鳴っているわけではない、ということはさっきの説明を読めばわかりますね。

じゃあ「楽器を鳴らす」ってどういうこと?ってなると思うんですが、僕は「楽器を鳴らす」ということについて
楽器が鳴る=楽器自体がよく振動している
と考えています。分かりやすく言えば、楽器が響いているということですね。

楽器自体の振動とは?

クラシックギター製作家の桜井さんがインタビューでお話しされていた例がとても分かりやすいので、人に説明するときに使わせてもらってますが、楽器の振動を考える際には、打楽器、特に太鼓をイメージすると分かりやすいです。

太鼓って、木でできた丸い胴の上に皮をピンと張っていますよね。

次に太鼓の音をイメージしてみましょう。

どうですかね。太鼓の音ってめっちゃでかくないですか?
その理由は、皮に与えられた振動が、胴全体に響くためです。
胴がしっかりと響くことでズーンと大きな音量を出すことができるんですね。これが「楽器が鳴っている」ということです。

要するに、太鼓は先ほど説明した②の楽器が振動して発生する音を使って音量を出している、ということになります。(例えばですが、机と机の間に皮だけピーンと張って叩いてもショボい音量しか出ないのはイメージできますよね。)
②の楽器が振動して発生する音で作られる音量は、太鼓をイメージすると分かりやすいですね。

これを撥弦楽器に置き換えてみましょう。

この画像で察した方もいると思いますが、
楽器を鳴らすには、表面板(太鼓でいう皮)をめちゃくちゃ振動させることでボディ(太鼓でいう胴)にその振動を伝える必要があるんです。

前述したように
楽器が鳴る=楽器自体がよく振動している
と考えると、太鼓のイメージみたいに
ボディにピンと張られた表面板を振動させることでその振動をボディに伝え、結果的に楽器自体がよく振動している状態にしていくこと
が、楽器を鳴らすためには重要なんですね。(YouTubeの桜井さんインタビューの丸パクリですが)

ですが、太鼓とは決定的に違う点としては、
マンドリンやギターは表面板を叩いて演奏するわけではない
ということです。

じゃあどうやって振動させればいいのか?という疑問が起こると思うので、次に具体的な楽器の鳴らし方を説明しますね。

具体的な楽器の鳴らし方

表面板を振動させるには

結論から言うと、
ブリッジ(駒)に弦の振動を伝える
ことで表面板が振動します。

ブリッジとはこの部分です。

撥弦楽器は弦を弾いて演奏するので、太鼓のように表面板をバシバシ叩いて鳴らすわけにはいかないです。
じゃあ「弦の振動をどうやって表面版に伝えているのか?」ということを考えると、ブリッジが重要なポイントになります。

ブリッジは弦と表面板のどちらにも接していますよね。ブリッジの上に弦が乗っていますし、表面板の上にブリッジが固定されています。

つまり、ブリッジは弦と表面板を経由する橋(ブリッジ)ということですね。

それはどうでもいいんですが、要するに
弦を振動させる→弦の振動がブリッジに伝わる→ブリッジの振動が表面板に伝わる
というプロセスを経て、弦を弾くことで表面板が振動されるんですね。

表面板を強く振動させるには、ブリッジに弦の振動をめちゃくちゃ伝えてあげなきゃいけないってことです。

じゃあ次にブリッジに弦の振動を伝える方法を教えます。

ブリッジを振動させるには

よく上手い人が「ピックをちょっと斜めにしろ」とか言ってると思いますが、あれの意味を完全に理解している人は少ないんじゃないでしょうか。

なんでピックを斜めにするか、というと、
平行にピッキングするとブリッジに振動が(あまり)伝わらないから
なんですよね。

イメージすると分かりやすいんですが、楽器の表面板に対して平行にピッキングする場合、ブリッジの上を弦が横に滑ってるだけになりますよね。
それだとブリッジに弦の振動が全く伝わらず、結果的に表面板が振動せず楽器が鳴らない、ということになります。

次は、どうすればブリッジに一番振動を伝えられるかを考えましょう。
僕個人は、ブリッジを一番振動させる方法としては
ブリッジに垂直方向の弦の振動を与えること
だと思ってます。

ブリッジの上を弦が横滑りするより、ブリッジに対して弦がしっかりと圧力をかける、つまりブリッジに垂直方向の振動を与えるほうが、なんとなくブリッジが一番振動するであろうことは想像できますよね。

しかし垂直方向に弾くのは物理的に無理です。
じゃあどうするの?という話になるんですが、垂直方向に近づければいいわけなので
ピックを斜めにして弦を弾き、その結果として弦を斜めに振動させてやればいいんです。
なので「ピックをちょっと斜めにしろ」ということが言われるんですよね。

ピックを斜めにすると楽器が鳴る、という背景には
こういうプロセスがあるわけなんですね。

これはギターも同じです。ギターでは爪の横側を滑らせるように弦を弾きますが、弾く際に若干サウンドホール側に弦が抜けるようにして弾いてやると、楽器が鳴りやすくなります。
これも垂直方向の弦の振動を与えてあげることで、表面板に固定されているブリッジが振動し、結果的に表面板を伝ってボディ全体が振動することで「楽器が鳴る」ということですね。

実際に弾く場合

ギターは右手の角度をちょっと気にすれば常に鳴らせるようになるので大丈夫です。

マンドリン属の場合、ピッキングの際はブリッジを振動させるイメージでピックを軽く斜めにするといいです。トレモロをする際には斜めにしすぎるとトレモロしづらくなるので並行で大丈夫ですが、ブリッジを振動させるイメージは強く持っておきましょう。意識するだけでも違います。(斜めをキープしたままでもできないことはないですが、ピックの先端や持ち方を工夫する必要があります。長くなるので書きません)

鳴っているかの判断方法

ギターの場合、左手で表面板を触りながら開放弦を弾いてみましょう。多分斜め、垂直気味に弾いたときの方が、同じ力で弦を弾いても表面板の振動の仕方、音量が全然違うと思います。

マンドリン属の場合、ネックとボディがくっついているところを触りながら「鳴らす弾き方」をやってみましょう。同じピッキングの強さでも、「鳴らす弾き方」の方が圧倒的にボディが振動してることが分かると思います。あと音色自体も深い音に変わりますよ。

まとめ

まず
・音量が出ない
→「楽器を鳴らす」ことをしていないのが理由

ということを最初に説明しました。

次に
・楽器を鳴らすということは?
→鳴らす=楽器を振動させる

ということを説明しました。

最後に

ブリッジに対して垂直方向の弦の振動を与える

ブリッジが振動するため、ブリッジにくっついている表面板も振動する

表面板が振動するため、表面板とくっついているボディ(横板、裏板)も振動する

楽器全体が振動するため、楽器の振動による音が発生する

弦だけの音ではなく、所謂「楽器の鳴り」が音量にプラスされる

音量が出るようになる

ということを説明しました。
以上です。

マンドリンの音】シリーズ第1回目として、鳴りや音量について話しました。
今度は音色とかについて書いていこうかなと思います。
整数次・非整数次倍音による音の丸み・柔らかさなどについてですかね。
頑張って書きます。

2件のフィードバック

  1. 初めてコメントさせて頂きます、楽器の鳴らせ方理論がとても分かり易く感銘を、受けました!

    楽器自体のブリッジもしっかり表面板に接地しているのも要因としては有りますね。

    私のプログ等で引用紹介させて頂いても宜しいでしょうか?

    1. コメントいただきありがとうございます!
      誰かのためになれば、と思い記事を書いておりますので、そういった言葉をいただけると本当に嬉しいです。
      引用は大歓迎ですので、ぜひよろしくお願いいたします…!

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管理人・ライター

坂口

2000年、北海道生まれ。

北海道大学入学後、北海道大学チルコロ・マンドリニスティコ「アウロラ」に入部したことをきっかけに、マンドリン、クラシック音楽を本格的に始めました。マンドリン、クラシックギターを吉住和倫に師事。

アウロラの第98代コンサートマスターとして、またマンドリンアンサンブル・リデアなどで活動後、現在は札幌市内のマンドリンオーケストラであるフィラルモニカ・マンドリーニ・アルバ・サッポロにて演奏しています。

マンドリンやギターのメディア運営を通じて、音楽の面白さを伝えていきます。

ライター

小森

2000年、静岡生まれ。

16歳でクラシックギターを始め、北海道大学入学後、北海道大学チルコロ・マンドリニスティコ「アウロラ」に入部。アウロラ98代ギタートップ。
クラシックギターを深澤太一氏、吉住和倫氏に師事。これまでに大萩康司氏、菅沼聖隆氏、小暮浩史氏のマスタークラスを受講。2020年北海道アマチュアギターコンペティション6位、2021年同大会5位。

マンドリンアンサンブル・リデアで活動後、フィラルモニカ・マンドリーニ・アルバ・サッポロにて演奏しています。