こんにちは、坂口です。
この記事では、マンドリン初心者の方向けに「これやっておいたら確実に上手くなるだろう」という練習方法を紹介していきます。
楽器の練習方法に関して、上手い人達やプロの方々などが共通して言うのが
「頭を使って練習しよう」
ということです。
ただ、楽器を始めたてであれば
「頭を使えって言ったって、そもそもどうやって使えばいいのか分からないんだよ!」
と思う方々は多いのではないでしょうか。自分もその一人でした。
まず第一に【楽器を弾く上で必要な観点・考え方】を教えてもらわないと、頭を使いたくても何に気をつければいいのか分からないから無理でしょ、ということで、この記事では
- そもそも、どういうことに気をつけながら練習すればいいのか
- 楽器を弾いたり練習する上で必要な観点・考え方は何なのか
という点を重視して説明できればいいかな、と思います。
上記ポイントに加えて、「自分だったらこう練習します」という具体的な練習方法も書いてあるので、ぜひ参考にしてみてください。
今回は左手編ということで、特に基本的な部分から実際に曲を演奏するにあたって必要な基礎練習など、左手にフォーカスした内容を書いていきます。
右手編は1年前に書いているのですが、左手編に関しては完全に書いた気になって忘れていました。すみません。
なるべく伝わりやすく説明できればと思います。それではいきましょう〜
マンドリンの弦の押さえ方
左手の練習をする上で
「左手で弦を押さえるってどういうこと?」
というのを理解する必要があると思うので、なかなか説明されないことが多い超基本の部分から説明します。
マンドリンの押弦(弦を押さえること)にあたって重要な観点は、だいたい以下の2点かと思います。
- フレット楽器の仕組みを理解する
- 弦を押さえるにあたって必要な力加減をコントロールする
枚挙にいとまがないくらい重要なポイントはありますが、とりあえず最初はここを意識してみるといいかもしれません。
フレット楽器の仕組み
そもそもマンドリンはどういう楽器か、どういった仕組みで音程を変化させられるのか、ということ分かっておくと、一人で練習する際に工夫して練習できそうなので、ご説明します。
マンドリンは、弦を弾いて音を出す撥弦(はつげん)楽器の一種です。
加えて、「フレット」と呼ばれるパーツを用いて弦長を変化させることで音程を変化させるフレット楽器の一種でもあります。みなさんご存知のギターと一緒ですね。
最初に楽器に触れると、指板を指で押さえると音程が変化する、ということは感覚的に理解できるはずですが、そもそも弦楽器にて音程を変化させるメカニズムとしては
弦長を変化させる
ことが挙げられます。小中学校の理科の授業で、弦の長さを変えたら音程が変わる、みたいなのがありましたよね。あれです。
ではマンドリンのようなフレット楽器にて、どのように弦長を変化させ、音程を変えているのか、というと
- 指板上のフレットで区分けされた部分を指で押さえる
- ブリッジと、区分けされたフレットのうちブリッジ側にあるフレットによって弦長が変化する
- 弦長が変化することで音程が変化する
という仕組みになっています。
逆算して考えると、「マンドリンで音程を変化させるためにはどうすればいいのか?」というポイントに関して
指板を押さえて、フレットとブリッジによって弦長を変化させる
ことで可能となる、というわけですね。
マンドリンで弦を押さえる際に注意するべきポイント
上記を考慮すると、マンドリンで弦を押さえる際は
フレットとブリッジによって弦長を変化させるために
必要最低限の力で指板(フレットによって区切られた部分)を押さえること
が重要になります。弦長が変化した、とみなされるだけの力で指板を押さえればOKで、それ以上の力をギュッと入れて押さえても別に意味がない、ということです。指が痛くなってしまうだけですね。
なので、ぜひやってほしい練習方法としては
弦を押さえるにあたって必要な力加減をコントロールする
練習です。
練習の流れは以下の通りです。
- 指板(フレットによって区切られた部分)に指を乗せる
- 指に徐々に力を入れながら弦を押さえると同時に、右手でその弦を弾いてみる
- どのくらいの力を入れて弦を押さえれば音程が変化するか、ということを感覚的に理解してみる
めちゃくちゃ大雑把にまとめると「押さえて音がなるかならないかのギリギリ加減を把握する」というイメージです。
単純に楽器を練習を続けていけば、前述した音程が変化する仕組みや必要な力加減は感覚で(言語として落とし込まなくても)理解可能ですが、最初から分かっておいた方が、指が痛くなったり左手が疲れてやる気なくなる、みたいなことが避けられるかな〜と思うので、ぜひやってみるといいかな、と思います。
上記の力加減のコントロールに関して、楽器をある程度続けると「脱力」という言葉でまとめられることが多い気がします。ただ個人的には「脱力」をすることが重要なのではなく
その都度、場面によって必要な力加減をコントロールすること
が本質的に重要なのであって、その手段として「脱力」があるだけだと思っています。
「脱力」という言葉で丸投げするのは無責任な気がするので、何でもかんでも力を抜けばOK、というわけではないぞ、ということを理解できるといいかもしれないですね
長くなってしまいましたが、初心者の方は、まず初めに
- フレット楽器における音程変化のメカニズム
- 音程変化(フレットを押さえる)際に必要な力加減のコントロール
を肌感覚で理解してから左手の練習をするといいかな〜と思います。
(まあ最初は指が痛くなってしまうのは避けられないので、痛くても無視して弾き続ける根性も必要だとは思います…)
演奏に必要な前提知識
マンドリンやギターなどの弦楽器では、左手の各指に対して番号が振り分けられています。
人差し指:1
中指:2
薬指:3
小指:4
左手親指は基本的に使わないので、番号は特に振り分けられていません。
後述する練習や、実際の演奏にあたっても上記知識は必要となるので、覚えておきましょう。
指の独立練習
前置きが長すぎましたが、ここからは具体的な練習方法をご紹介いたします。
まずは指の独立練習から説明します。
指の独立とは?
まず、左手を普通に開いてみましょう。
その状態で、人差し指だけを手のひらにつけるイメージで曲げてみてください。多分問題なくできるかと思います。
では、中指だとどうでしょうか?結構キツくないですか?
薬指、小指に対しても同様に行ってみましょう。おそらく、他の指も一緒に曲がってしまったり引っ張られてしまったりすると思います。
弦楽器を演奏する上で「左手の使いたい指だけを意識的にコントロールする」ことはめちゃくちゃ大事なので、上記のように対象としている指に加えて他の指も一緒に動いてしまう状況を避けるために
指を独立して動かす
ことが必要となります。
指の独立練習:その1
各指を独立して動かすために、以下の練習をやってみましょう。
練習時のポイント
練習時のポイントとしては、まず以下の2点
- 使わない指はG線を押さえてキープする
→実際の演奏で、使っていない指がバタバタしてしてしまい運指が乱れることを防ぐため。
→使いたい指「だけ」を動かす目的で、他の指をキープさせながら動かす - 弦を押さえると同時に、次に動かす指を次に押さえるフレットの上に準備させる
→次に押さえるフレット上に指を準備しておく、ということをしておけば、余裕を持って弾ける
→それぞれの指を「意識的に独立させて動かす」という練習にもなっている
という点が技術的に意識する必要があるかな、と思います。
少しわかりづらいかと思いますが、具体的なやり方は以下の画像の通りです。
イメージとしてはこんな感じです。
すみません。上記GIFは壁を背景にするために立って動画撮りながらやっているので、少し指がバタついています。とりあえずイメージだけ掴んでもらえればと思います。
1と2、2と3など、隣り合わせの指は比較的やりやすいですが、1と3、2と4など、離れた指で上記練習をやってみると結構難しいと思います。これを続けることで、狙ったフレットに指をコントロールした上でしっかりと押さえることができると思います。
左手の練習に共通するポイントとしては、前述した「押弦に必要な力加減のコントロール」を意識してやってみてください。よくあるミスとしては
- 力任せに指を動かしてしまう
- 結果、指がバタバタしてしまう
- 動かさず、フレット上に固定している指に力が入りすぎてしまう
最初は
とにかくゆっくりのテンポから練習すること
で、前述したポイントやよくあるミスを防ぎながら練習するといいと思います。
指の独立練習:その2
その2では
ポジションに合わせて指の形(フォーム)を変化させながら練習する
ということを行います。左手のフォームを意識しつつ、その1で行った独立練習をしてみましょう。
それに際して「ポジションってなんだ?」ということを軽く説明します。
ポジションとは?
まず、以下の楽譜に書かれた音階(スケール)を指番号に従って軽く弾いてみてください。
この時、指の開き方のパターン・フォームがどういった形になっているかを考えてみましょう。
実際に弾いてみるとわかりますが、この楽譜で使った指の位置って、「横幅だけ」考えると
3フレット〜8フレットまでの6フレット分
で収まりますよね。
例えば、上記の楽譜のハ長調(C Major scale)を用いて「カエルの歌」とかを弾いてみてください。
実際に弾いてみると、手をわざわざ動かさずとも、指さえ準備できればそのポジションで演奏できますよね。
みなさんが普段聞くほとんどの曲も、音階と調性さえわかれば、大体同じポジションで弾き続けられます。
対応できない場合は、別のポジションに移ることで上手く弾けるようになっています。
このように実際の演奏では
- 1の指を基準として6フレット分の横幅、区間に左手の各1〜4指を配置させる
- 基準となる1の指を置くフレットを変化させ、音階を変化させる
という仕組みで楽曲を演奏します。これが【ポジション】と呼ばれる概念です。
詳しくは「バイオリン ポジション」とかで調べると詳しい説明が出てくると思います。
※一部誤解を招く表現があるかもしれませんが、何となくこんな感じだと思ってください。
分かりづらい説明で申し訳ないですが、マンドリン演奏においては、【ポジション】という概念に則って
- 6フレット分の区間に1〜4指を配置させて演奏することが基本
- 1〜4指の配置の仕方はいろんなパターンがある
ということを理解することが重要です。
なので「指の独立練習:その2」では、このポジションという概念に照らし合わせた上で「指の独立練習:その1 」で行った練習を行ってみましょう。
頻繁に使うフォーム
6フレットの中でよく使う指の配置(フォーム)は以下の通りです。
先ほどの音階(スケール)を弾いた際に使ったパターンの抽出です。
実際にこのように指を配置してみて、よく使うパターンを視覚的に覚えてみましょう。
練習方法
練習方法は「指の独立練習:その1」のやり方と全く同じです。
- フレットの場所はどこでもOK(適当でOK)
- 上記のように、6フレット分の区間に指を配置する
- G線上に使わない指を固定し、対象とする指を動かす
注意するポイントは説明したものと同じです。以下に実際の練習のイメージを載せておきます。
上記の「独立練習:その1、その2」をしっかりやることで、指を動かす際の力のコントロールや意識的な指の使い分けができるようになります。
普段の練習でこういった基礎練習を取り入れると、必ず上達するのでぜひやってみましょう。
基礎練習に関して
とりあえず、マンドリンをはじめたての初心者の方が上達するための練習(特に左手の技術向上のための練習)として、前述した内容をやってみるのがいいと思います。
ここでは一旦話題を変えて
基礎練習をする時に大事な考え方
を説明したいと思います。
基礎練習のルールは、目的・目標を明確にすること
おそらくサークルや部活では、伝統的な基礎練習みたいなものが存在すると思います。
特にサークル、部活でマンドリンを始めてすぐの初心者の方は
「先輩から教えてもらった通りのやり方で練習しないといけないんだ!」
と思ってしまい、教わった練習を機械的に無心でやり続けてしまう、といったことが多いのではないかと思います。
個人的な答えとしては、それはちょっと違うんじゃないか、と思っていて、あくまでも基礎練習は
「楽器を弾く上での課題やエラーに対して、それを克服する」
ということを目的としていると考えています。
なので、基礎練習(普段の練習)のルールとしては
- 練習の目的・目標は何なのか?ということを理解する
- その目的・目標を達成するためにどうすればいいのか考える
ことかな〜と思います。
別にルールといっても楽器演奏なんて自由に楽しめばいいと思うので、弾きたいように弾くのも全然OKだと思います。「最短ルートで爆速で上手くなりたいんだよ!」という方は、前述した練習のルールを意識しながら普段の練習を行うと、多分いいぞ、という話です。
冒頭に説明した「頭を使って練習しよう」ということは、上記のように考えながら練習しろ、ということです。そのために、これまでの説明では
目的・目標を自分で設定できるように、楽器演奏において重要とされている考え方や観点を共有する
ということを念頭においてゴチャゴチャと書いていました。
練習方法を自分なりにアレンジしてみる
【指の独立練習:その1、その2 】では、指の独立や意識的なコントロール技術の獲得を目的として説明していました。
例えばですが、前述した練習に関しても、自分なりに目標設定をしていろいろアレンジするのも可能です。以下では、多種考えられるアレンジ方法について、その目的・目標と具体的なアレンジの仕方(つまり、目的を達成するために行う具体的な練習方法)を少しご紹介します。
◆固定する指を置く弦を変えてみる
これまでの練習では「使ってない指はG線において練習する」という説明をしていました。でもこれって、別にG線だけに置いて練習するということに固執する必要はないですよね。
例えば以下のような目的・目標を設定したとしましょう。
▶︎3、4の指で巻弦(G線、D線)を押さえる際のコントロール精度を上げたい
→巻弦は張力が強く、押さえるのにある程度の力が必要なので、力を入れにくい3、4の指で押さえる時にうまく押さえられないため
こういうケースでは、例えば
- 1、2の指をE線に固定し、G・D・A線を使って3、4の指の独立練習を行う(指の独立練習:その1の応用)
- 同じような練習を、左手のフォームを変えて行ってみる(指の独立練習:その2の応用)
みたいにアレンジすることができると思います。
◆2本の指だけではなく、1本や3本などを動かしてみる
▶︎そもそも指1本でも動かすのが難しいので、まずは1本ずつうまく動かせるようになりたい
▶︎より実際の演奏を想定して、1、3、4などを同時にコントロールして動かせるようになりたい
という目的・目標がある場合
- 2、3、4を全て同一弦に固定し、1の指だけを爆速&正確に動かす練習をする
- 2の指だけ弦に固定し、1、3、4の独立練習を行ってみる
みたいなアレンジも可能ですね。先に示した楽譜とは少し違った練習になりますが、再度お伝えするように「教わった通りの練習をすることが重要なのではない」と思うので、別に楽譜も好きに変えて演奏してもらって大丈夫です。(楽譜あったほうが伝わりやすいので載せてるだけです)
まとめ
初心者の方が練習する際に重要なことは
- 楽器を弾く上で重要な考え方・観点を知ること
- その考え方・観点に基づいて、自分に必要な目的・目標設定を行うこと
- その目的・目標を達成するための練習方法を考え、実践すること
だと思います。
なので、練習方法や実際の演奏指導など、各種教わる場面では、まずは「どういった考え方・観点が背景にあってそれを共有しているのか?」ということを考えるといいと思います。
自分で考えて分からなければ「これって何の目的があってやってるんですか?」ということを聞いてみるといいかもしれないです。(あんまりストレートに聞きすぎると嫌われるかもしれないので、それとなく聞いてみましょう…)
今回は左手にフォーカスしながらいろいろと説明しましたが、左手に限らず実際に練習するにあたって大事な考え方を伝えた(つもり)なので、ぜひ参考になればと思います。
ここまで読んでくれた皆様、ありがとうございます〜
初心者から中級者にステップアップする練習なども、今後書いていく予定ですのでぜひ読んでみてください。(自分は中級者なのか?まだ初心者じゃないのか?という疑問はありますが、一応コンマスは何回かやっているのでとりあえず許してください)
以上です。お疲れ様でした〜